賃貸物件に入居している借主は退去時原状回復に戻す義務が発生します。簡単に言えば入居時の状態に戻すことです。
ただ長期入居になると、自然損耗や経年劣化が発生している可能性が高いため、入居時の状態に戻すことはできません。
そこで退去時に行われる立ち合いで、経年劣化の原因が誰にあるのか確認した上で原状回復請求をかけることになります。原状回復は明確なルールがあるため、貸主側が勝手判断してしまうとトラブルに発展する可能性が高くなるため、アパート経営をしている貸主は必ず把握しなければなりません。
本投稿は退去時の原状回復について貸主が確認すべきポイントを解説します。
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▼目 次
【本記事でお伝えする結論】
1.原状回復とは?
原状回復に関する取り決めは、一昔前は存在自体がありませんでした。
そのため退去費用をめぐるトラブルが多くなったため、国土交通省は原状回復に関するガイドライン
を平成10年に作成し原状回復の定義を決めました。
また2020年に改正された民法でも、原状回復に関する規定がより明確になりました。
国土交通省及び民法によって原状回復がより鮮明となり…
貸主責任:通常損耗/経年劣化が原因によるもの
借主責任:故意過失による破損や汚損したもの
となったため、よりわかりやすくなりました。
2.原状回復の責任者について
退去時に原状回復が必要になった場合、修繕責任がどちらにあるのか具体的な事例を交えながらお伝えいたします。(〇:修繕費用負担 ×:修繕が発生しない)
借主 | 事 例 | 貸主 |
× | ポスターやカレンダー掲示による壁紙日焼けor画鋲跡 | 〇 |
〇 | 画鋲以上の穴をあけてしまった | × |
× | 冷蔵庫/テレビ設置跡(所謂電気ヤケ) | 〇 |
× | 床に家具跡などが残ってしまう | 〇 |
〇 | 家具などを移動中に発生させたキズ(例:床、壁) | × |
〇 | 壁や床に落書きを書く | × |
〇 | 床や壁にシミを発生させた(例:ジュースをこぼしてシミになった) | × |
〇 | タバコによる壁紙の黄ばみ/ヤニが残る(入居期間関係なし) | × |
〇 | 善管注意義務違反によるカビ/油汚れ | × |
× | エアコン増設(貸主許可あり)した際の原状回復 | 〇 |
〇 | 退去時の室内クリーニング(特約がある場合) | × |
特に気を付けないといけないのが「善管注意義務違反」によるカビや油汚れがあった場合です。
善管注意義務とは「善良なる管理者の注意義務」の略のこと。借主は部屋の管理者として注意しながら室内を使用することが求められています。
そのことから掃除不十分による「浴室コーキングのカビ」「通常のクリーニングでは落としきれないキッチン周りの油汚れ」が散見された場合は、善管注意義務違反となる可能性が高くなるため借主責任となります。
ただし入居前にコーキングの打ち直し済み/入居中室内清掃が行われていれば、善管注意義務違反ではなく通常損耗になる可能性が出てくるため注意が必要です。
3.要注意!原状回復費用が全額請求できないケース
借主責任による破損や汚損があった場合、貸主に全額請求することができますが、稀に全額請求することができない場合もあります。それは…
借主が契約時に家賃保証会社を利用し、退去時原状回復費用を支払わない
場合です。原状回復費用を一定期間内に支払わないと、管理会社は家賃保証会社に代位弁済請求をかけ原状回復費用を支払ってもらうようお願いすることになります。
ただし家賃保証会社を利用しても、代位弁済による原状回復費用は上限が設定されているため、上限を超えた部分は貸主負担となってしまうため注意が必要です。
4.まとめ
今回は退去時の原状回復について貸主が確認すべきポイントをお伝えしました。冒頭でお伝えしたポイントをもう一度確認してみましょう。
築年数が経過すると物件資産価値が低下するため、退去後に原状回復を行っただけでは早期客付けはできません。
実際原状回復程度の工事しかしていない物件では、空室長期化/家賃値下げを余儀なくされてしまうため収益性が低下しています。
そのため築年数が20年以上経過している物件は、収益性向上が期待できるリノベーションを検討したほうがいいと思われます。
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