賃貸物件を募集する際に敷金を設定することで家賃滞納や夜逃げリスク/借主責任による破損や汚損費用に充当することができます。そのため敷金を設定すると賃貸管理上のリスク軽減を図れることができます。
ただ最近の賃貸市場では敷金設定されている物件は一部に限られています。このことから再募集する際、敷金設定したほうがいいのかどうか迷う貸主は多いはずです。
本投稿は賃貸募集時に敷金は設定すべきかについて、お伝えいたします。
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▼目 次
【本記事でお伝えする結論】
"賃貸募集時における敷金設定における重要なポイント”
1.民法改正
1)原状回復
借主が退去する際、入居前と同じ状態に戻す義務があります。ただ入居中に自然損耗/経年劣化/破損や汚損が発生するため100%元の状態に戻すことは不可能です。
そこで原状回復に戻すことができない場合、その原因が借主/貸主どちらにあるのか管理会社(自主管理物件では貸主)立会いのもと退去立ち合いを行います。
ただ原状回復に関するトラブルは非常に多く独立行政法人国民生活センターの調べによると、本来ならば貸主責任となるものを借主請求している事例が後を絶ちません。
同センターに寄せられた相談内容を一部抜粋すると…
6か月居住した賃貸アパートを退去。玄関の壁紙のわずかな傷で、全面張替え費用を請求された。
賃貸マンションを退去した所、高額なハウスクリーニング費用を請求された
原状回復に関する法的な規定に関して今まで明文化されていませんでした。
しかし2020年に行われた民法大改正によって原状回復に関する規定が追加されました。これによって、退去時における原状回復の責任度合いがより明確になりました。
第621条(賃借人の原状回復義務) 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃借物が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、その限りではない。
2)敷 金
民法改正によって敷金も明確化されました。その結果…
名目に関わらず「担保目的」であれば敷金となる
借主の賃料滞納などの債務不履行があった際にその弁済に充てる
契約終了などによる明渡の際、敷金から修繕費などの債務不履行額を差し引いた額は借主に返還
することになりました。
2.保証会社の利用で敷金は有名無実化
契約時に敷金を預け入れた借主が家賃滞納/夜逃げした場合、法律上敷金から相殺することができます。
ただ実際に家賃滞納/夜逃が発生げしてしまうと、敷金だけでは対応することが難しくなります。敷金相殺で待ち合わない場合、当然ながら連帯保証人に対し支払いを求めることになりますが、債権回収する場合司法判断が必要となるため、回収までに時間と費用が掛かってしまいます。
2000年代に入ると家賃保証会社が急速に普及し、近年では賃貸物件の約8割は家賃保証会社を利用していると言われています。
家賃保証会社を利用することで…
家賃滞納/夜逃が発生しても保証会社が代位弁済してくれる
借主が保証会社に保証料などを支払うことで、保証会社が事実上の連帯保証人となる
家賃滞納長期化による強制退去を行う場合、保証会社が裁判費用を全額負担
してくれることから、敷金は事実上有名無実化状態となっています。
3.ペット可能物件では敷金設定が必要に
家賃保証会社を利用することで事実上敷金不要にすることができます。ただしペット可物件では、今まで通り敷金設定しておいた方が無難です。
背景には入居中ペット原因による破損/汚損発生確率が高くなり、退去費用が一般的な物件と比較すると高額になります。
また借主が退去費用支払いを拒み管理会社/貸主が代位弁済請求しても、原状回復費用は上限設定(概ね家賃3か月分)されていることから、破損汚損状態がひどいと貸主負担が大きくなってしまいます。
このことから確実に退去費用をもらうためにも、ペット可物件においては築年数関係なく敷金設定をしておいた方が安心と言えます。
4.まとめ
今回は賃貸募集時に敷金は設定すべきかについて、お伝えしました。冒頭でお伝えしたポイントをもう一度確認してみましょう。
家賃保証会社の普及により借主が敷金を預け入れなくても、万が一借主が夜逃げ/家賃滞納しても保証会社が代位弁済してくれるため、敷金は事実上有名無実化となります。
また家賃保証会社を利用することで、借主の信用情報/家賃支払い能力も把握できることから借主の質を高めることも期待できます。
そのため昔と比べると敷金設定に強いこだわりを持つ必要はないと言えます。
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