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【アパート経営】相続してから空室0にするまでやってきたこと②


空室対策コンサルタント 長田 穣

私は、山梨県甲府市で祖父から相続した「アパート経営」を破産寸前の状態から黒字化することに成功し、そのノウハウを空室でお悩みのオーナーさんにお手伝いをする会社、有限会社 山長を経営しております長田 穣(オサダミノル)と申します。



本投稿は2部構成となっており、1部では「どん底の経営状態から経営が改善し始めるきっかけ」について執筆してみました。続く今回は「なぜ家賃相場を無視して集客をしているのに、アパートの満室状態が続くのか?」について、お伝えいたします。




入居者を募集する際、殆どのオーナーさんは同じエリア内の家賃相場を気にされるのではないでしょうか?



現在では、大手賃貸検索サイトに物件情報を掲載することが当たり前となっており、家賃相場は誰でも簡単に把握できるため、実際に部屋探しをされている方は、家賃相場は確認しています。



相場に近い家賃設定にすれば、客付けがしやすくなるのは当然ですが、その一方で、築年数が経過するほど、家賃相場は下落していくので、収益性が悪化する懸念も生まれます。



家賃相場を無視した集客ができたらいいのに・・・そう考える賃貸オーナーさんは少ないはずです。



結論から言いますと、家賃相場を無視した家賃設定でも集客は可能であり、また満室にさせることも決して不可能ではありません。



ただしその実現には、ちょっとしたコツが必要で、そのヒントは「顧客の創造」というキーワードにあります。それでは順を追って見ていきましょう。


▼目 次

 6-4. 金利節約

7. まとめ


1.試験的なリノベーションを開始


2017年の繁忙期、今までの成功事例で対応した空室対策リフォームが殆ど埋まらず、追い打ちをかけるように、3月下旬に転勤による退去が2件同時で発生したため、「もう今までの空室対策では通用しない」と直感し、リフォームからリノベーションへと方向を転換する決意をしました。



ただ、リノベーションするとなっても「費用が今までの2倍以上」になることは明白であり、どのようなコンセプトで対応すればいいのかわからなかったので、試験的に空き部屋を利用してキッチンと和室のみリノベーションしてみることにしました。


最初に着目したのはキッチンのリメイク


リノベーションとは、一般的に築年数が経過した物件の「既存の設備や内装、または間取りを変更」することを意味します。



そのため古い設備は最新設備を導入するのが、賃貸業界では一般的な考え方となっています。



弊社物件でも当初は「壁付けキッチンから対面キッチンの変更」もしくは、同型の最新キッチンを導入しようと考えました。



しかし賃貸検索サイトを通じて競合他社のリノベーション物件を確認すると、同様の設備が導入されており、弊社物件で同じことを行えば、差別化が難しくなるのではと危機感を抱きました。



そこで目をつけたのが、カフェスタイルです。


手を加えていなかった賃貸キッチン
手を加えていなかったキッチン
キッチン本体を生かしたオリジナルのカフェスタイルキッチン
キッチン本体を生かしたオリジナルのカフェスタイルキッチン

今の時代、街のあちこちに「おしゃれなカフェ」があり、店内には男性客より女性客の方が圧倒的に多いです。ではなぜ女性客が多いのでしょうか?



弊社代表は女性がカフェに訪れるのは、温かみが感じられる店内で「リラックスしたい」「友達と会話を楽しみたい」と考えているからと推察しています。



弊社物件はファミリータイプで、部屋探しの主導権は女性が握ることが多いです。つまりリノベーション部屋を「カフェスタイル」にすることで…



  • 他社との差別化を図ることができる

  • 「キッチン」を、カフェ風にアレンジすれば入居の決め手となる

  • 家賃値上げも可能になる



のではと考えています。そこで既存のキッチンを活かし、無垢材扉を取付けたカフェスタイルキッチンを作成し、さらに使い勝手を向上させるために「可動式のキッチンカウンター」も取付けました。



和室が嫌な人でも受け入れられる琉球畳


今から20年ぐらい前の賃貸物件では、部屋の1室に和室があっても、特に問題視されることはありませんでした。


一昔前の賃貸物件で和室部屋があるのは当たり前でしたが…
一昔前の賃貸物件で和室部屋があるのは当たり前でしたが…

しかし近年ではライフスタイルの変化により、「実家に和室がない」方が増え、さらに賃貸で和室があると「賃貸借契約の特約」により「退去時に表替え」を行い、その費用は破損や汚損などがなくても100%借主が負担しなければなりません。



そのため和室がある賃貸物件の数は減少傾向にあります。和室を洋室に間取り変更するで、集客上「有利」になる一方、和室感はどうしても残るためその違和感は否定できません。


和モダン空間が魅力的な琉球畳に変更後、反響率増加!
和モダン空間が魅力的な琉球畳に変更後、反響率増加!

住環境研究所が2025年2月に発表したリリースによると、戸建て住宅を建てた若い世代の中で、リビング内に小規模な畳コーナーを設ける傾向が増加しているとのことです。



このことから弊社では、顧客が和室を避ける理由は「退去時の表替え」にあり、和室そのものを完全に否定する方は「少ない」と分析しました。



そこで日焼けがしにくく、モダンな雰囲気が魅力的な琉球畳を導入すれば、若い世代でも受け入れられるのではないかと考え、試験的に導入しました。


果たしてその結果は??


2017年の7月頃にカフェスタイルキッチンと琉球畳を、試験的に空き部屋に導入しました。賃貸業界では夏場は入居需要が落ち込む「閑散期」となり、入居希望者が減少しますが、キッチンと畳を交換した部屋は募集開始から1ヶ月以内にすぐに埋まりました。



さらに別の部屋でも「同様の対応」をしたところ、すぐに埋まりました。これをベースに新たなリノベーションブランドを立ち上げれば、徹底的な差別化と収益アップを図ることができると確信しました。



2.第三の賃貸ブランドをスタート


第三の賃貸ブランドを確立


「新築でも築古でもない、第三の賃貸物件」を確立すべくリノベーションブランド=「Grace Royal Elegant Room」を2018年1月に立ち上げ、同年3月に第1弾となるリノベーション部屋を募集しました。


【Elegant Room仕様の部屋】※部屋によって使用は若干異なります



競合他社物件では提供できない「カフェスタイル」に特化したリノベーション部屋を提供し、キッチンは無垢材扉を用いたオリジナルキッチンを導入し、カフェのお店の雰囲気をより味わってもらうために、ペンダントライトとダウンライトをLDKに標準装備しました。



さらに、洗面台は「完全オーダーメイド」にすることで差別化を徹底し、和室は琉球畳に変更することで、賃貸にいながら「和洋折衷生活」を楽しめるように工夫しました。



今までのリフォームと比べて「2倍程度」の費用が掛かったことから、リノベーションを機に「家賃を10%程度引き上げ」て募集を開始しました。



3.反響は大きいけど・・・



満を持してリノベーション部屋を募集開始しましたが、反響はあるものの早期客付けが全くできず空室期間が長期化しました。結論として第一弾のリノベーション部屋は、2018年3月に募集開始したものの、成約は同年10月でした。



なぜここまで時間がかかったのか、最初は理解することができませんでしたが、内見者からのヒアリングで…



「リノベーション部屋自体はとてもいいが、家賃予算に合わない」



という意見が多く寄せられました。またリノベーション部屋の家賃は「エリア内の同築年の物件と比べて、1万円以上相場より高い」ため、反響はあるものの、その後の「内見予約」「成約」に結び付けることができませんでした。



そこで家賃をリーズナブルに抑えるために「リノベーション箇所を限定的」にすることを考え、同年12月に「Elegant Room Second Line」というブランドを立ち上げ、3棟ある物件の内、2棟は「Elegant Room仕様」とし、1棟は「Elegant Room Second Line仕様」でリノベーションを行いました。



【Elegant Room Second Line仕様】の部屋



リノベーション個所を限定したセカンドラインは、目論見通り「すぐに反響を得る」ことができ、成早期成約に結び付けることが可能でしたが、本命のリノベーション部屋であるElegant Roomは成約になるまで時間がかかりすぎ、その結果、空室による機会損失が増加してしまいました。



4.独自の集客を確立、そして反響数の増加へ


独自集客を確立、そして反響数増加

「競合他社との差別化を図ったリノベーション部屋がどうして埋まらないのか?」



その答えはとても簡単です。



賃貸物件を募集する際には、大手賃貸検索サイトに物件情報を掲載しますが、部屋探しをされる方は「築年数」「エリア」「家賃帯」などの条件を自由に入力して検索できるため、1項目でも条件に合わなければ、その時点で成約候補から除外されてしまいます。




弊社の家賃値上げしたフルリノベーション部屋は…



  • 家賃が相場より高すぎる

  • 築年数が古すぎる

  • 大手賃貸サイトのリノベーション条件に合致していない



ことから、検索時点において「詳細画面」に残ることができず、さらに賃貸サイトでは「リノベーション部屋」専用ページがあるものの、同サイト内の「リノベーション定義」に合致していないため、掲載されないことから、賃貸サイト上に物件情報を掲載しても、客付けがが厳しくなります。



それならば「独自集客」を行えば、賃貸サイトのデメリットを解消することができると考え、2018年11月より「物件専用HP」を開設し、同時に公式InstagramTwitterYouTubeを立ち上げました。



公式サイトを設けることで、「築年数や家賃」等で検索されることがなく、また今の時代はSNSを日常的に利用する人が増えているため、物件情報をブログやSNSで拡散させることで、ハッシュタグ検索をされた方に「ダイレクトに情報を提供すること」が可能になりました。



その結果現在では物件に入居される方の約8割は、弊社公式サイトからアクセスされた方となっております。



5.リノベーション=イノベーション


リノベーション=イノベーション

2018年からカフェスタイルに特化した「差別化リノベーション」を展開し、公式サイトを立ち上げることで、独自集客を確立した結果、年々反響数が増加し満室になることが常態化しています。



これを実現したのが、リノベーションを行いながらも、イノベーションを忘れずに進めているからです。



リノベーション費用の圧縮


公式サイトの立ち上げによって、物件認知度が向上し、反響数も年々増加しています。そのためリノベーションの質をさらに良くしようと、費用をかけて充実したリノベーション部屋を作り、その分家賃もさらに値上げした結果、成約が難しくなりました。



そのため近年では、Elegant Room仕様の部屋は、約230万円/Second Line仕様の部屋は、約150万円の予算で、予算内で上質な部屋を作るよう努めています。



弊社リノベーションは、可能な限り「オーダーメイド」対応としていますが、既製品でも、導入することで集客上有利になることもあります。



特にSecond Line仕様の部屋は、予算が限られているため、コストカットが求められています。



以前IKEA立川店に行った際、弊社で採用している「無垢材のキッチンカウンターの代わり」となるおしゃれなカウンターが販売されていたため、2021年の夏に試験的に「IKEA製のキッチンカウンター」を導入した所、募集開始後1週間程度で「成約」となり、IKEAのキッチンカウンターが入居の決め手の一つとなりました。


自然素材の漆喰を使用する


2018年にリノベーションブランドを立ち上げた際には、現在では普通に使っている「漆喰」は使用していませんでした。



漆喰との出会いは、リフォーム産業新聞社が主催している賃貸セミナーに参加した時でした。



担当者の説明を聞いているうちに「これをリノベーション部屋で導入すれば、差別化が図られ、さらに日焼けがしにくいので、ランニングコストを抑えることができる」と判断し、試験的に漆喰を導入した所、ご入居者様から高い評価を頂きました。



そこで、Elegant Room仕様のリノベーション部屋においては、漆喰を標準にすることに決めました。



クッションフロアを導入する理由


リノベーションを行う際には、床材を変更するケースが多いのですが、弊社ではあえて「フロアタイルではなくクッションフロア」を採用しています。



フロアタイルは非常に精巧で「本物と見分けがつかない」ほど優れた床材ですが、吸音性が期待できないため、特に1階に入居される方にとっては、上階からの生活音トラブルが発生するリスクがあります。



一方クッションフロアは吸音性が優れ、さらにコスト削減も可能なため、弊社では積極的にクッションフロアを採用しています。



6.差別化リノベーションがもたらしてくれたもの


差別化リノベーションがもたらしてくれたもの

家賃相場の影響を受けにくくなった


他社物件との差別化を徹底的に図るリノベーションを行った結果、資産価値が向上し家賃相場を無視した集客が可能となりました。



さらに内見時に「入居後のイメージ」を伝えることで、「家賃が高いイメージ」を払拭し、顧客満足度が向上しました。そのため内見時や契約更新時に家賃相場について指摘されることは、殆ど無くなりました。


収益性がアップ


差別化リノベーションを行うことで、Elegant Room仕様の部屋では、従前家賃と比べて「8~10%の値上げに成功」し、「Second Line仕様」の部屋は、家賃自体は従前家賃と同じであるものの、エリア内における同築年の家賃相場と比べると、5,000円以上は高くなっています。



高稼働率を維持できれば、収益性を簡単に向上させることが可能となりました。




メディアに取り上げられるようになった


弊社物件がある山梨県は、全国的に賃貸空室率が悪く、特に築古物件は価格競争の影響を受けやすいのですが、弊社が行った収益改善/空室対策は、賃貸業界でも珍しい手法であるため、多数のメディアに取り上げられるようになりました。


金利節約


一般的に金融機関からリノベーション資金を借入する際は、プロパー融資となりますが、同融資は金利自体はそれほど高くありませんが、審査が厳しい点がデメリットです。



弊社物件ではプロパー融資より金利が安くさらに返済期間が長い、公的融資を積極的に活用しています。



弊社物件がある山梨県甲府市には「小規模事業者小口資金」という公的融資制度があり、この融資制度を活用すると、金利2.2%ですが、年1回「1.2%分の利子補給」を受けることができるため、プロパー融資より金利を節約することができます。



金利引き下げ


弊社物件は、おかげ様をもちまして2020年以降4期連続で増収増益を達成することができたため、メインバンク担当者に金利の見直しをお願いした所、一部の借入のみではありますが、金利を引き下げてもらうことができました。


7.まとめ

いかがだったでしょうか?



2本の投稿にわたって私が破産寸前のアパートを相続し空室ゼロの状態に至るまでの取り組みや、試行錯誤、その結果をまとめました。



賃貸空室率が全国的に悪化している山梨県において、築30年目を迎える弊社物件でも、家賃相場の影響を受けずに、独自の家賃設定で満室を実現できたポイントは…



常に「顧客の創造」を意識してきたという点が挙げられます。





賃貸経営というと、部屋探しをされているお客様に「目がむいてしまう」ものです。



お客様のニーズに合った部屋を提供することは、重要なことではありますが、物件を管理する管理会社/部屋を紹介する仲介会社にとって、弊社物件を管理/仲介することで得られる費用対効果を、リノベーションを通じてしっかり説明できることが、空室が発生しても迅速に対応してもらえる要因です。



つまり、「三方ヨシ」の関係性が強固であることが、弊社物件を満室にする最大の要因だと考えています。



空室が中々埋まらないと、つい管理会社/仲介会社の「責任」を追及したくなるものですが、裏を返せば「お客様がその部屋を嫌っている」ことを示唆しているようなもの。



その事実をしっかりと受け止めた上で、顧客が創造できる物件づくりを行えば、少子高齢化の時代においても、安定した賃貸経営を続けられるでしょう。



空室対策コンサルタント 有限会社山長
有限会社山長 長田 穣

取締役 長田 穣(オサダミノル)

アパート経営、空室対策コンサルタント


あなたのアパート経営を支援させていただきます!


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