【アパート経営】相続してから空室0にするまでやってきたこと②
更新日:10月12日

私は、山梨県甲府市で祖父から相続した「アパート経営」を破産寸前の状態から黒字化することに成功し、そのノウハウを空室でお悩みのオーナーさんにお手伝いをする会社、有限会社 山長を経営しております長田 穣(オサダミノル)と申します。
本投稿は2部構成となっており、1部では「どん底の経営状態から経営が改善し始めるきっかけ」について執筆してみました。続く今回は「なぜ家賃相場を無視して集客をしているのに、アパートの満室状態が続くのか?」について、お伝えいたします。
入居者を募集する際、ほぼ全てのオーナーさんは同じエリア内の家賃相場を気にされるのではないでしょうか?
今の時代、大手賃貸検索サイトに物件情報を掲載するのが当たり前となっていることから、家賃相場は、誰でも簡単に把握することができ、実際お部屋探しをされている方は、家賃相場をよく見ています。
相場に近い家賃設定にすれば、客付けがしやすくなるのは当然ですが、その一方で、築年数が経過するほど、家賃相場は下落していくので、収益性が悪化してしまうといった懸念も生まれてしまいます。
家賃相場を無視した集客ができたらいいのに・・・そう思う賃貸オーナーさんも少なくないのではないでしょうか。
結論から言いますと・・・家賃相場を無視した家賃設定をしても、集客することは可能であり、また満室にさせることは、決して不可能ではありません。
ただし実現するためには、ちょっとしたコツが必要で、そのヒントは「顧客の創造」というキーワードにあります。
では順に見ていきたいと思います。
▼目 次
1-1. 最初に着目したのはキッチンのリメイク 1-2. 和室が嫌な人でも受け入れられる琉球畳
1-3. 果たしてその結果は??
2. 第三の賃貸ブランドをスタート 3. 反響は大きけど・・・
5-1. リノベーション費用の圧縮
5-2. 自然素材の漆喰を使用する
5-3. クッションフロアを導入する理由
6-1. 家賃相場の影響を受けにくくなった
6-2. 収益性がアップ
6-3. メディアに取り上げられるようになった
6-4. 金利節約
6-5. 金利引き下げ
7. まとめ
1.試験的なリノベーションを開始
2017年の繁忙期、今までの成功事例で対応したリフォーム部屋が「殆ど埋まない」状態となってしまい、追い打ちをかけるように「3月下旬に転勤による退去」が、2件同時で発生してしまったことから、「もう今までの空室対策では通用しない」と直感し、リフォームからリノベーションへと舵を切ることになりました。
ただ、リノベーションするとなっても「費用が今までの2倍以上」になることは明白であり、どのようなコンセプトで対応すればいいのかわからなかったので、試験的に「空き部屋使って」キッチンと和室のみリノベーションしてみました。
最初に着目したのはキッチンのリメイク
リノベーションとは・・・
一般的に築年数が経過した物件の「既存の設備や内装、または間取りを変更」することを意味します。
そのため設備が古いものに関しては「最新設備」を導入するのが、賃貸業界では当たり前の考え方となっています。
当初弊社所有物件でも、「壁付けキッチンから対面キッチン」もしくは、壁付けスタイルは踏襲するものの、最新キッチンを導入しようとしました。
しかし賃貸検索サイトなどを通じて競合他社のリノベーション物件で見てみると、同じような設備が導入されていて、弊社物件で同じことをしたら、差別化を図ることは難しくなってしまうのでは?と、危機感を覚えました。
そこで目をつけたのが、カフェスタイルです。


今の時代、街のあちこちに「おしゃれなカフェ」があり、店内には男性より女性の方が圧倒的に多いはずです。
ではどうして女性客の方が多いのか?
それは店内がナチュラルテイストに統一されていて、リラックスすることができるからだと推察しています。
つまり、賃貸をカフェスタイルにリノベーションすれば、他社との差別化を図ることができる、更に賃貸の顔ともいうべき「キッチン」を、カフェ風にアレンジすれば入居の決め手となり、家賃値上げも可能になるのでは?と思い、既存のキッチンを生かして、無垢材扉を取付けたカフェスタイルキッチンを作成し、さらに使い勝手をよくするために「可動式のキッチンカウンター」も取付けました。
和室が嫌な人でも受け入れられる琉球畳
今から20年ぐらい前の「ファミリー向け賃貸物件」では、部屋の1室に和室があっても、特段問題にはなりませんでした。

しかし、近年ではライフスタイルの変化によって、「実家に和室部屋がない」という方が増加、さらに賃貸で和室部屋があると「賃貸借契約の特約」によって、「退去時に表替えをしないといけないルール」となり、その費用は破損や汚損などがなくても100%借主負担となってしまうことから、今では減少傾向となっています。
和室を洋室に間取り変更することによって、集客上「有利」になる一方、和室感はどうしても残ってしまうため、その違和感は否定できません。

弊社では、和室部屋を嫌う原因を「退去時の表替え」にあり、和室そのものを完全に否定する方は「少ない」と分析し、それならば日焼けがしにくく、モダンな雰囲気が魅力的な、琉球畳を導入すれば、差別化を図れるのではないか?と考え、試験的に導入してみました。
果たしてその結果は??
カフェスタイルキッチン及び琉球畳を、試験的に空き部屋に導入したのが、2017年の7月ころ。
賃貸業界的に夏場は、入居需要が落ち込む「閑散期」となってしまい、お部屋探しをされる方そのものが少なくなります。
しかしキッチンと畳を交換した部屋は募集開始から1ヶ月もたたないうちに、すぐに埋まりました。
さらに別の部屋でも「同様の対応」をしたところ、すぐに埋まったことから、これをベースとしたあたらなリノベーションブランドを立ち上げれば、徹底的な差別化+収益アップを図ることができると確信しました。
2.第三の賃貸ブランドをスタート

「新築でも築古でもない、第三の賃貸物件」
を確立すべくリノベーションブランド=「Grace Royal Elegant Room」を2018年1月に立ち上げ、同年3月に第1弾となるリノベーション部屋を募集しました。
【Elegant Room仕様の部屋】※部屋によって使用は若干異なります
競合他社物件では提供することができない、「ナチュラルテイスト」に特化したリノベーション部屋
にし、キッチンはカフェスタイルにリメイク+キッチンカウンターを導入し、カフェの雰囲気をより味わってもらうために、ペンダントライトとダウンライトをLDKに標準装備。
さらに、洗面台は「完全オーダーメイド」にすることで差別化を徹底し、和室は琉球畳に変更することで、賃貸にいながら「和洋折衷生活」を楽しめるように工夫いたしました。
リノベーションを行ったことによって、今までのリフォームと比べて「2倍程度」の費用が掛かったことから、リノベーションを機に「家賃を10%程度引き上げ」て募集を開始しました。
3.反響は大きいけど・・・

満を持してリノベーション部屋を募集開始しましたが、反響はあるものの「成約に結び付ける」ことがなかなかできませんでした。
結論から言うと、第一弾のリノベーション部屋は、
2018年3月に募集開始したものの、成約となったのは同年10月でした。
どうしてここまで時間がかかったのか、最初は理解することができませんでした。
ただお客様からのヒアリングで「リノベーション部屋そのものは、とてもいいが、家賃(予算)が合わない」というお声を多数頂いたこと、またリノベーション部屋の家賃は「エリア内の同築年の物件と比べて、1万円以上相場より高い」ことから、反響はあるものの「その後の内見予約」にまでつなげることができませんでした。
そこで考えたのは「リノベーションの箇所を限定的」にすることで、家賃をリーズナブルに抑える部屋=セカンドライン的な部屋を作れば、成約に繋げられるのではと考え、同年12月に「Elegant Room Second Line」というブランドを立ち上げ、3棟ある物件の内、2棟は「Elegant Room仕様」とし、1棟は「Elegant Room Second Line仕様」でリノベーションを行いました。
【Elegant Room Second Line仕様】の部屋
リノベーション個所を限定したセカンドラインは、目論見通り「すぐに反響を得る」ことができ、成約に結び付けることが可能となった一方で、本命のリノベーション部屋=Elegant Roomは成約になるまで時間がかかりすぎてしまい、空室による機会損失が多くなってしまいました。
4.独自の集客を確立、そして反響数の増加へ

「競合他社との差別化を図ったリノベーション部屋がどうして埋まらないのか?」
その答えはとても簡単です。
賃貸物件を募集する際、大手賃貸検索サイトに物件情報をアップしますが、お部屋探しをされる方は「築年数」「エリア」「家賃帯」等を自由に入力して検索することができるため、1項目でも条件に合わなければ、その時点で成約候補から除外されてしまいます。
弊社の家賃値上げしたフルリノベーション部屋は…
家賃が相場より高すぎる
築年数が古すぎる
大手賃貸サイトのリノベーション条件に合致した部屋ではない
ことから、検索時点において「詳細画面」上に残ることができず、さらに賃貸サイトでは「リノベーション部屋」専用ページがあるものの、同サイト内における「リノベーション定義」に合致していないと、掲載されないことから、もはや賃貸サイト上に物件情報を掲載しても、勝負することは難しくなってしまいます。
それならば「独自集客」を行えば、賃貸サイトのデメリットを解消することができると考え、2018年11月より「物件専用HP」を開設し、それと合わせて公式Instagram/Twitter/YouTubeを開設しました。
公式サイトを立ち上げることによって、「築年数や家賃」等で検索されることがなく、また今の時代はSNSを日常生活上において活用されている方が多くなってきたので、物件情報をブログやSNSなどで拡散させることで、ハッシュタグ検索をされた方に「ダイレクトに情報を届けること」が可能となったことから、今では物件にご入居される方の約8割は、弊社公式サイトからアクセスされた方となっております。
5.リノベーション=イノベーション

2018年より、ナチュラルテイストに特化した「差別化リノベーション」を展開し、さらに公式サイトを立ち上げることによって、独自集客を確立することができたことから、年々反響数が増加し満室になるのが当たりとなっています。
これを可能にしたのが、リノベーションはしているものの、イノベーションを忘れずに行っていることです。
リノベーション費用の圧縮
公式サイトの立ち上げによって、物件認知度も上がり、反響数も年々増加傾向となっていることから、リノベーションの質をさらに良くしようと、費用をかけて充実したリノベーション部屋を作り、その分家賃もさらに値上げして募集した所、成約に繋げにくくなってしまいました。
そのため近年では、Elegant Room仕様の部屋は、予算200万円程度/Second Line仕様の部屋は、予算100万円程度にし、予算内で何とか上質な部屋を作るように心がけています。
弊社リノベーションは、可能な限り「オーダーメイド」対応としていますが、既製品であったとしても、導入することで集客上有利になることもあります。
特にSecond Line仕様の部屋は、予算的に厳しいものがあるので、コストカットが求められています。
以前IKEA立川店に行った際、弊社で採用している「無垢材のキッチンカウンターの代わり」となるようなおしゃれなカウンターが販売されていたので、昨年試験的に「IKEA製のキッチンカウンター」を同仕様の部屋に導入した所、募集開始後1週間程度で「ご成約」となり、IKEAのキッチンカウンターが入居の決め手の一つとなりました。
自然素材の漆喰を使用する
リノベーションブランドを立ち上げた2018年においては、今では普通に使っている「漆喰」は使用していませんでした。
漆喰との出会いは、リフォーム産業新聞社が主催している賃貸セミナーに参加した時。
説明を聞いているうちに「これをリノベーション部屋で導入すれば、差別化につなげられ、さらに日焼けがしにくいので、ランニングコストを抑えることができる」と判断し、試験的に漆喰を導入した所、ご入居者様から高い評価を頂きました。
そこで、Elegant Room仕様のリノベーション部屋においては、漆喰を標準装備対応としました。
クッションフロアを導入する理由
リノベーションを行う際、床材を変更するケースが多いのですが、弊社リノベーションではあえて「フロアタイルではなく、クッションフロア」を採用しています。
フロアタイルは一見すると「本物と見分けがつかない」ぐらい精巧となっています。
ただその一方で、フロアタイルは「吸音性」は期待できないことから、生活音に敏感な方が1階にご入居されている場合、生活音トラブルに発展する可能性がありますが、クッションフロアは吸音性が期待でき、さらにコストを下げることが可能なため、弊社ではあえてクッションフロアを積極的に採用しています。
6.差別化リノベーションがもたらしてくれたもの

家賃相場の影響を受けにくくなった
他社物件との「徹底的な差別化リノベーション」を図ったことによって、家賃相場を無視した集客が可能となりました。
さらに内見時に「入居後のイメージ」をお伝えすることによって、「家賃が高いといったイメージ」をなくすことが可能となったため、顧客満足度が高くなり、家賃相場のことを指摘されることは、殆ど無くなりました。
収益性がアップ
差別化リノベーションを行うことによって、Elegant Room仕様の部屋では、従前家賃と比べて「8~10%の値上げに成功」し、「Second Line仕様」の部屋は、家賃そのものは従前家賃と同等ではあるものの、エリア内における同築年の家賃相場と比べると、5000円以上は高くなっていることから、高稼働率を維持することができれば、収益性を簡単に高めることが可能となりました。
メディアに取り上げられるようになった
弊社物件がある山梨県は、日本一空室率が悪く、特に築古物件は「価格競争の影響を受けやすくなっている」のですが、弊社が行った収益改善/空室対策は、賃貸業界においても珍しい手法であることから、多数のメディアで紹介されるようになりました。
金利節約
お住まいの市区町村によって異なりますが、弊社物件がある山梨県甲府市においては「小規模事業者小口資金」という公的融資制度があり、この融資制度を活用すると、金利そのものは2.2%ではありますが、年1回「利子補給」を受けることができますので、金利を節約することができます。
(この融資制度は、メインバンク担当者から、直接教えてくれて、とても助かっています。)
金利引き下げ
弊社物件は、おかげ様をもちまして2期連続「増収増益」を達成することができ、その旨をメインバンク担当者に伝え、金利の見直しをお願いした所、一部の借入のみではありますが、金利を引き下げてもらうことができました。
7.まとめ

いかがだったでしょうか?
2本の投稿にわたって私が破産寸前のアパートを相続してから満室ゼロの状態に至るまでに取り組んだこと、試したこと、その結果得られたことをまとめてみました。
日本一空室率が悪い山梨県で、築30年目を迎える弊社物件であっても、家賃相場の影響を受けずに、独自の家賃設定で満室を実現することができた、ポイントととして、
常に「顧客の創造」を意識してきたという点が挙げられます。
賃貸経営というと、ついお部屋探しをされているお客様に「目がむいてしまう」ものです。
確かに、お客様のニーズに合った部屋を提供することは、当然ながら重要なことではありますが、それと同等に、物件を管理してくれる管理会社/お部屋を紹介してくれる仲介会社にとって、弊社物件を管理/仲介することで、どのくらいの費用対効果を享受することができるかを、リノベーションを行うことによって、しっかりと説明することができることから、仮に弊社物件に空室が発生したとしても、すぐに対応してくれます。
つまり、「三方ヨシ」の関係性が強固になっていることが、弊社物件を満室にさせた最大の要因であると考えています。
空室が中々埋まらないと、つい管理会社/仲介会社の「責任」を追及したくなるものですが、裏を返せば「お客様がその部屋を嫌っている」ことを示唆しているようなもの。
その事実をしっかりと受け止めた上で、顧客が創造できるような物件づくりをすることができれば、例え少子高齢化の時代を迎えようとしても、安定した賃貸経営を継続できるはずです。

私たち有限会社 山長ではここまで綴ってきた経験をベースにアパート経営の空室改善のお手伝いさせていただくリノベーションのコンサルティングを行っています。
アパートの空室改善をお考えの方はまずは安心の無料相談からお気軽にお問い合わせください。