賃貸空室対策を万全にすれば、退去は怖くありません
- 空室対策リノベーション コンサルタント ㈲山長
- 7月29日
- 読了時間: 9分
更新日:9月15日
不動産投資における最大のリスクは、退去が発生すると家賃収入がゼロになってしまうことです。
近年の賃貸市場は空室率が悪化傾向にあり、物件を募集しても必ずしも借主を確保できるわけではありません。特に競争力が低下した築年数が古い物件は、客付けが難しくなるため、そのことから賃貸経営の安定性に不安を抱える貸主も多い状況です。
退去を完全に防ぐことは不可能ですが、適切な「賃貸空室対策」を実施することで、物件の築年数や募集関係なく短期間で客付けすることは十分可能です。

このような話をすると、次のような疑問を抱く方もいるかもしれません。
「それは築年数が浅い物件や、人気エリアにある物件に限った話なのではないか?」
弊社物件は築30年を超え、物件がある山梨県は賃貸空室率が約30%と厳しい状況です。しかし徹底した差別化戦略を取り入れた空室対策を行った結果、2020年以降4期連続で増収増益を達成し、年間稼働率95%以上を継続。
昨年度(2024年)は、アパート収入が過去最高を記録する成果を上げています。
本投稿は賃貸空室対策を万全に行えば、退去が発生しても怖くない理由を弊社事例を交えながらお伝えいたします。
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【本記事でお伝えする結論】
1.効果的と言われている空室対策とは?

近年の賃貸市場は、需要と供給のバランスが完全に逆転し、特に築20年以上の物件では、競争力が著しく低下しています。その結果、適正家賃で募集しても客付けが難しくなっています。
こうした状況を受け、一部の貸主は最近注目されている「効果的とされる空室対策」を実践するようになっています。その具体例として以下の方法が挙げられます。
入居条件の緩和(外国人、高齢者受入、ペット可に変更)
初期費用ゼロ化
管理会社の変更
これらの対策は、一時的に客付けを促進する効果が期待できるものの、入居後にトラブルが発生する可能性が高まるという側面があります。こうしたリスクを鑑みると、これらの方法を安易に推奨することは難しいと言えます。
その理由について、以下で詳しく解説します。
1)入居条件の緩和=管理の質低下の懸念

入居条件を緩和することで、新たな需要を引き出し、反響を得やすくすることが期待されるため、成約率の向上も見込めます。しかしその一方で借主属性が低下し、管理面で問題が発生する可能性が高まります。
外国人受け入れ
日本語能力が十分でない借主の場合、生活モラルの維持が難しくなり、設備の破損やゴミ分別に関するトラブルが発生するリスクが高まります。
ペット可に変更
ペットと暮らしたいというニーズは高く、ペット可物件への変更は反響増加に繋がる可能性があります。
一方でペットの鳴き声などにより、既存の借主とのトラブルが生じやすくなり、それによる退去リスクも考えられます。また退去時には、ペットによる汚損問題で、原状回復費用に関するトラブルが発生する恐れもあります。
高齢者受入れ
近年は健康寿命が延びていることから、実家を処分し賃貸アパートへの住替えを希望する高齢者が増加しています。このため高齢者を受け入れることで、空室率の改善が期待されます。
しかし賃貸業界では依然として高齢者の受け入れには消極的な姿勢が見られます。その背景にはびょしや突然死などによる「事故物件」リスクを避けたいという考えがあります。
国の方針変更で、一部を除き室内の病死は告知義務が撤廃されたものの、多くの管理会社はイメージ面でのリスクを警戒しているのが現状です。

全体的に借主属性が低下すると、他の借主への迷惑行為が増加する可能性があります。このような問題を起こす借主に対し退去を促したい場合でも、「借家権」による法的保護があるため、簡単には対応できません。
仮に重大な賃貸借契約違反があったとしても、それを正当事由として認めてもらうには、司法の場で正当性を証明する必要があります。このプロセスには時間と費用がかかり、けっかてきに退去させるハードルが非常に高くなる現実があります。
2)初期費用ゼロ化

賃貸物件に入居する際、借主は仲介会社に「家賃4~6か月分」程度の初期費用を支払う必要があります。
もしその初期費用が無料となれば、借主にとって大きな負担軽減となり、浮いた費用を生活費や引っ越し費用などに回せるため、多少希望条件と合わない物件でも、入居を検討する方が増える可能性があります。
しかしこのような措置を講じると、借主側に「この物件は多少無理な要求しても、応じてくれる」といった誤った印象を与えるかもしれません。それが原因でカスタマーハラスメントを引き起こすリスクが生じることも考えられます。
結果として借主属性が悪化し、物件管理や契約上のトラブルが頻発する恐れがある点には、注意が必要です。
3)管理会社を変える前に…

管理会社を変えることで入居率が向上したという話はよく耳にしますが、実際に部屋が埋まらない主な原因は「部屋のクオリティーが低すぎる」ことにあります。
このような物件では、管理会社がどれほど営業努力しても早期客付けはできません。仮に客付けが成功した場合でも、家賃を下げることで借主属性が悪化し、入居後にトラブルが発生するリスクが高まります。
また管理会社を変えると、併せて家賃保証会社との契約が終了する場合があります。別の保証会社に再加入することは可能ですが、その際には、借主に費用負担を求めることになるため、これが新たなトラブルの原因になる可能性がある点に、注意が必要です。
さらに借主が保証料負担を拒否した場合は、貸主が保証料を負担するか、保証未加入という選択肢を取ることになります。どちらの場合もリスクやコストが増大するため、正直なところおススメしづらいのが現状です。
▶管理会社変更に関しては、こちらをご覧下さい。
2.差別化空室対策が、どうして重要なのか?

賃貸物件の空室対策において最も重要なのは、他社が真似できない独自の施策を実行することです。

賃貸市場では供給が需要を大きく上回り、特に築年数が経過した物件ほど供給量が増加します。そのため、借り手が自身の希望に合う物件を見つけやすくなり、築20年以上の物件は競争力を失いがちで、価格競争に巻き込まれることが多くなります。
家賃を値下げして客付けできたとしても、収益が減少し損益分岐点が上昇するため、貸主にとっては実質的なメリットは殆どありません。さらに、古い物件は供給過多の状態が続いているため、家賃を下げても早期に部屋が埋まる可能性は引くのが現実です。
こうした空室の長期化や価格競争から抜け出すためには、競合物件との差別化を図ることが不可欠です。借主に「家賃が高くてもここに住みたい」と思わせるような、魅力ある部屋を提供することが、唯一の解決策となります。
3.差別化空室対策を万全にしたら空室期間短縮に成功!

冒頭でも触れましたが、弊社物件がある山梨県は賃貸空室率が約30%台と厳しい状況に位置しています。それに加えて、弊社物件は築年数が古いため、市場では「客付けが難しい物件」といった印象を持たれがちです。
しかしこの逆風の中でも、弊社は成果を上げ続けています。2020年以降満室状態をほぼ維持し、4期連続で増収増益を達成しています。この飛躍的な成果の背景には、競争力を高めるための徹底した差別化戦略を基盤とした空室対策があります。
具体的な取り組みとしては、以下のような施策を行いました。
顧客のニーズに応えるため、カフェスタイルに特化したリノベーションを推進
物件専用のウェブサイトを立ち上げて、検索の利便性を向上させ、集客力を強化

これらの差別化戦略により、弊社物件の成約期間は年々短縮されました。例えば、2025年度は1月と2月にそれぞれ1件ずつ退去が発生しましたが、1件は退去3日後、あと1件は入居中にそれぞれ申込が入りました。
この結果、2025年度は「平均成約期間がマイナス」という記録を達成することができました。
▶弊社の差別化戦略に関しては、過去記事をご覧下さい。
4.まとめ
今回は賃貸空室対策を万全に行えば、退去が発生しても怖くない理由を弊社事例を交えながらお伝えしました。冒頭でお伝えしたポイントをもう一度確認しましょう。
物件の空室対策を工夫することで、仲介会社に「紹介しやすい物件」として認識され、優先的に案内される可能性が高まります。差別化によって他社物件との差が際立ち、その結果として入居希望者との接点が増えるという好循環が生まれるのです。
2022年3月~5月に3件退去が発生しましたが、わずか2か月余りで全室埋めることができました。特筆すべきは、3件全てが他社仲介会社からの紹介でした。
この実績は、空室対策や物件の価値向上への取り組みが、市場でしっかりと評価されていることを示されています。物権価値のアピールと差別化が、周辺との連携を含めた成功要因になったと言えるでしょう。
今回ご紹介した内容を実践して頂ければ確実に効果は期待できますが、「こんなのどこから手をつけていいかわからない!」という方もいらっしゃるのではないかと思います。
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取締役 長田 穣(オサダミノル)
アパート経営、空室対策コンサルタント
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