賃貸経営の負のスパイラルとは?
更新日:6月22日
どのような物質でも、時間が経過してしまうと、その価値が低下してしまいます。
一部の物質は「価値が低下しにくい」ものもあるものの、そのようなものは「ごく限られている」のが現状となり、価値を下げたくなければ、しっかりと対応することが重要となります。
賃貸物件も「新築時」「築年数が浅い時期」は、何もしなくても「勝手にお客様からの反響」を得られやすくなり、満室にすることは可能となりますが、築年数が10年意所経過してしまうと、資産価値が低下してくるので、新築時と「同じような家賃」のまま募集することは難しくなってしまいます。
賃貸経営の一番恐ろしいところは、一度値下げをしてしまうと、それを止めることが難しくなってしまい、気づいた時には「経営悪化」になっている可能性が高くなります。
これを「負のスパイラル」ともいいますが、もしこのような状態に陥った時、どのような対処法をすれば、経営改善を図れるのでしょうか?
目 次
1.賃貸経営の負のスパイラルとは?

1)賃貸経営における「負のスパイラル」の入口
例えば、物件に空きが発生した時、仲介会社にお願いして「物件情報を賃貸検索サイト」に掲載依頼をかけますが、一定期間募集し続けていて「空室がなかなか埋まらない」場合、管理会社担当者は「もしかすると、募集家賃が相場より高いのでは?」と感じ、オーナー様に「空室が埋まらないのは、恐らく相場より家賃が高いからだと思われるので、家賃を相場並みに値下げしてみませんか?」とお願いすることがあります。
これこそが、賃貸経営における負のスパイラルの入口=序章の幕開けとなります。
2)値下げして成約ができたとしても…
では、家賃を値下げして「成約ができた」と仮定した場合、オーナー様/管理会社双方がwinwinの関係となるのかというと、そういうことではありません。
家賃を値下げすれば、当然ながら「年間収入は減少」することになり、さらに値下げして募集を行った場合、それらの情報は「賃貸検索サイト」にも掲載されることから、その情報を見てしまった「他のご入居者様」は『自分達の部屋の家賃よりも安くなっている』ことに対して、不満を感じてしまいます。
そのことを「管理会社にクレーム」として伝えた時、担当者は「これはあくまでもキャンペーンだから」と説明したとしても、恐らく誰もが納得することはできません。不満を解消できないご入居者様は、「契約更新の際に、家賃減額請求」を行い、もし認められなければ退去するといった、強硬なカードを切ってくることが予想されます。
もし本当に「更新せずに退去」となってしまえば、また出直しをしなければならないので、やむを得ずに「家賃減額を認める」可能性が高くなってしまいます。
減額が認められたお客様は「ラッキー」と思いますが、実は一回でも減額に応じてしまうと、それら情報は「他のご入居者様にも話してしまう可能性」が高くなることから、同じような連鎖反応が発生してしまい、家賃値下げが続いてしまい、収益が一気に悪化してしまいます。
また、家賃値下げをして募集をしても、昨今の賃貸市場は「物件供給数が飽和状態」となっているため、同じような部屋は複数あることから、家賃をただ単に値下げしても、客付けが難しくなってしまう可能性が高くなり、その結果「空室期間が長期化」となり、この状況を打開しようと、さらに家賃値下げをしなければならなくなります。
ここまで来ると、もう完全に「負のスパイラル状態に入り込んでしまい、抜け出す」こと自体が難しくなってしまっています。
3)キャッシュフローが難しくなる
家賃を値下げして成約となっても、先程ご紹介した通り「他のご入居者様」にも、同様の対応を取らざるを得なくなってしまうため、収益が悪化してしまう可能性が出てきてしまいます。
その結果、退去後に「少し費用をかけてリフォームをしたい」と思っても、利幅が減少してしまえば、自己資金で対応することが難しくなってしまいます。
部屋のグレードアップすることができなければ、当然ながら「現在の家賃のまま」で募集をしても、空室が埋まりにくくなることから、やむを得ずに「さらに家賃を値下げして募集」することになりますが、この様なことをし続けていたら経営悪化を招いてしまう可能性が極めて高くなります。
4)空室の機会損失を防ぐという提案は、邪道
一部の賃貸空室コンサルタントの方は、「数か月募集をして部屋が埋まらないよりも、この際適正家賃にして、早期に空室を解消した方が、機会損失を防ぐことができる」と提案してきます。
例えば、家賃5万円の部屋が1年間空室が続き、3年間入居した場合、計算式は・・・
5万円×(36か月−12か月分の空室)=120万円
仮に家賃を5000円値下げして、2か月後に成約となり、3年間入居した場合は・・・
4,5万円×(36か月−2か月分の空室)=150万円
となることから、家賃を値下げして募集をした方が、結果的には「利益を多く確保」することができると、管理会社担当者は提案してきますが、先程から何度もお伝えしている通り、家賃を値下げしても「空室率が悪化」しているエリアでは、家賃をただ値下げしても、早期に成約になる可能性は「正直難しい」のが現実であり、さらにこのような提案を簡単に提案してくる管理担当者は、正直に言うと「管理能力が欠落」している可能性が高いです。
2.負のスパイラルからの脱出方法

1)基本はやはり物件清掃
負のスパイラル状態となってしまっている物件は、残念ながら「物件自体の価値が低下」してしまっています。ただし対応次第では、築年数が経過していたとしても、収益物件にさせることは十分可能です。
では、どのようなことを行えばいいのかというと、まずは「物件清掃」を徹底的に行うことであり、可能であればオーナー様自ら行うとさらにいいです。
物件清掃が「負のスパイラル脱出」にどうしていいのかというと、オーナー様自身が清掃業務を行うことによって、物件全体を把握することができるだけではなく、競合他社物件を「間近で確認」することができるため、「自分の物件に足りないもの」を直感的に把握することができます。
2)部屋のクオリティーを上げて、他社と差別化&家賃UP
負のスパイラルから脱出するためには、収益を改善するしか方法はありません。
ただ、現状の部屋のままでは、家賃を維持することは難しく、更にクオリティーが低い部屋は、どうしても「入居者属性が悪く」なる可能性が高くなることから、他社には真似できない「リノベーション」を行い、さらにリノベーションを機に「家賃値上げ」することによって、収益を改善することが可能となってきます。
私事ではありますが、弊社物件がある山梨県は「日本一空室率が悪い県」で、さらに弊社物件は「築30年目の和室ありの2LDK」となっているため、集客に苦戦を強いられてしまいそうなイメージが強いものの、弊社では他社がまず介入することができない「ナチュラルテイスト」に特化したリノベーションを展開し、リノベーションを機に家賃値上げを行っていますが、リノベーションのクオリティーが高いこともあるんで、早期に部屋が埋まる傾向となっています。
2022年度繁忙期においては、3月末までは満室状態となっていましたが、その後連続して3件退去があったものの、わずか3か月足らずで成約となりました。
3)低金利融資でリフォームする
リフォームやリノベーションをしたいと思っても、自己資金がなければ「金融機関から借入」を起こさないといけなくなります。
ただ、金融機関から借りる「事業系ローン」は、金利が高めに設定されているため、そこまでしてまでリフォームやリノベーションをする必要性があるのか?と、疑問を感じている方もいるはずです。
ただ場合によっては「金融機関で借りる事業系ローン」よりも、さらに安い事業系ローンがある場合もあります。
お住まいの市区町村によって対応は異なりますが、弊社がある山梨県甲府市においては、「小規模事業者小口資金」という公的融資制度があります。
この融資制度を活用することによって、金利そのものは2.2%ではありますが、年1回「利子補給」を受けられるので、実質金利は「なんと1.0%」。正直ここまで安い金利は、金融機関ではまずないので、とってもオトクな融資制度を言えます。
ただ唯一のデメリットを上げるとすると、同融資制度を使ったとしても、100%融資してもらえるのではなく、10%分は自分で用意をしなければならないことです。
4)リスケジュールを検討/借入先を変える
空室が目立ち画締めている物件では、恐らく毎月の返済が「きつくなっている」可能性が高くなっていています。無理してまで返済をがんばってしまうと、突発的な支払いが発生した際、返済すること自体が難しくなってしまいます。
それならば、借入先の金融機関担当者と相談して、返済計画の見直しをしてみてはいかがでしょうか?金融機関側も「返済が滞ってしまうより、条件緩和」した方が得策と考える可能性が高くなることから、「返済期間延長による毎月返済額の緩和」「一定期間元金据え置き」等の対応をしてくれるはずです。
また、もしアパートローン金利が高いと感じている場合には、借り換えをすることによって、毎月の返済額を軽減することができます。日銀のゼロ金利政策が続いている今、金融機関としては、融資をしたくても「利益確保が難しく」なっていることから、アパートローンを借り換えてもらえるだけでも、銀行側としてみたら「チャンス」ととらえる可能性が高くなります。
3.まとめ

いかがだったでしょうか?
負のスパイラル状態となってしまうと、収益悪化を招くだけではなく、支払い関係もきつくなってしまい、手遅れになってしまえば「物件売却」も視野に入れないといけなくなるものの、仮に売却できたとしても「残債を解消」することができなければ、元も子もありません。
私事ではありますが、28歳の時に「身内の不幸」によって、急遽賃貸オーナーに就任したものの、当時は「家賃収入より銀行返済」の方が完全に上回っていた「債務超過」の状態でした。
しかし、物件清掃/リフォームリノベーション実施/リスケ実施&借り換えなどといった「経営改革」を行ったことで、時間はかかりましたが、近年では毎年黒字達成中で、2022年度決算では「増収増益」も達成し、金融機関に「一部の借り入れの金利値下げ」をお願いした所、それも認めてもらうことができるまでになりました。
日本一空室率が悪く、さらに築30年を迎える弊社物件であっても、再生することができたということは、他県でも通用することができるはずです。

取締役 長田 穣(オサダミノル)
アパート経営、空室対策コンサルタント
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