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築30年以上の賃貸アパートで8年以上実践して分かった漆喰リノベーションの実例


賃貸アパートの空室対策の代表例といえば、壁紙の張り替えやアクセントクロスが一般的です。しかし、競争力が低下した築20年以上のアパートでは、単に内装をきれいにするだけでは、家賃を下げても空室は埋まりにくいのが現状です。



弊社は山梨県甲府市で、1993年築・全20戸のファミリー向けアパートを所有していますが、2018年から空室対策リノベーションを開始。



翌年から一部の部屋で自然素材の漆喰を採用し、2026年現在まで運用し、全20戸中10戸へ施工しています。



本投稿は、実際に賃貸リノベーションの現場で漆喰を導入し、長期間運用して分かったメリットや注意点、原状回復の影響について、私の実体験をもとにご紹介します。



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▼ 目 次




【本記事でお伝えする結論】


  • 弊社物件では2019年から漆喰壁を採用し、2026年5月末時点で10戸に施工した結果、空室対策の差別化に有効だった。


  • クロス張り替え中心だった原状回復が部分補修中心となり、コスト削減につながった。


  • 漆喰の質感や明るさは写真映えしやすく、内見時の第一印象が高くなる。


  • 漆喰単体では空室対策にならず、キッチンや募集戦略との組み合わせが不可欠。


  • 賃貸経営では初期費用ではなく、長期的な維持管理と収益改善で判断することが重要。


1.漆喰リノベーションを始めた理由


漆喰リノベーションを始めた理由

弊社物件では以前から表装リフォームに力を入れており、同築年の競合物件と比べると家賃相場よりやや高めの設定でも比較的早期に成約していました。



しかし2017年の繁忙期、募集部屋を殆ど埋めることができず、同年3月末には転勤による2部屋同時退去が発生し、その結果、稼働率が8割を下回る状況となりました。



この経験から表装リフォームだけでは、築年数が経過したアパートの空室対策としては限界があると判断。これを機に、単なる原状回復ではなく、室内価値そのものを高めるリノベーションへと方針転換しました。



その後、賃貸市場の最新情報やリノベーション事例を学ぶために参加していたセミナーで漆喰に出会いました。漆喰壁は、室内の明るさを高めるだけでなく、自然素材ならではの質感や温かみを演出できる可能性があると感じていました。



また当時だけではなく現在でも、賃貸物件に漆喰壁を採用している事例は決して多くはありません。そのため、築年数が経過したアパートでも、競合物件との差別化につながるのではないかと考えました。



つまり当初の目的は原状回復費用の削減ではありません。築年数が経過したアパートの空室対策として、室内の魅力を高め、競合物件との差別化を図ること。それが漆喰リノベーションを始めた理由です。



▶2017年の空室増加をきっかけに、なぜ表装リフォームからリノベーションへと大転換したのか?その経緯や具体的な改善内容は、以下の関連記事で詳しく解説しています。



2.実際に施工した漆喰リノベーション事例


弊社物件では2018年から空き室を順次リノベーションを行い、2019年から漆喰壁を採用しています。



2026年5月末時点、全20戸中10戸へ施工しており、その内の2戸は施工後から現在まで借主の入れ替えが発生していません。なお、漆喰を採用したリノベーション第1号部屋については、2018年にプレスリリースを配信しています。


▶関連資料




リノベーション前


【ビフォー】リノベーション前のLDK。一般的なクロス仕上げの室内で、築年数の経過と共に、競合物件との差別化が難しくなっていました。
【ビフォー】リノベーション前のLDK。一般的なクロス仕上げの室内で、築年数の経過と共に、競合物件との差別化が難しくなっていました。


リノベーション後


【アフター】漆喰壁を採用したリノベーション後のLDK。白を基調とした明るい空間となり、室内全体の印象が大きく変化しました。
【アフター】漆喰壁を採用したリノベーション後のLDK。白を基調とした明るい空間となり、室内全体の印象が大きく変化しました。


漆喰壁の質感


左官職人による完全手作業で仕上げた漆喰壁。量産クロスにはない自然な質感や陰影があり、室内の印象向上につながっています。
左官職人による完全手作業で仕上げた漆喰壁。量産クロスにはない自然な質感や陰影があり、室内の印象向上につながっています。


壁紙は糊を付けて施工するのに対し、漆喰壁は左官職人がコテを使って壁全体を塗り上げます。そのため表面にはコテ跡や自然な表情が生まれ、量産クロスにはない素材感を演出できます。



弊社では、この自然素材ならではの質感が一般的な賃貸物件との差別化につながると考え、空室対策リノベーションの一環として採用しています。


3.漆喰とクロスの違い


漆喰とクロスの違い


賃貸物件で一般的に使用される壁材は、量産クロスです。施工費を抑えやすく短期間で施工できるほか、一部の量産クロスはロングセラー商品もあるため、将来的な補修や原状回復工事にも対応しやすいというメリットがあります。



一方で築年数が経過したアパートでは、競合物件との差別化が難しくなるという課題があります。アクセントクロスは比較的低コストで、室内印象を変えられるため、空室対策として採用されることがあります。



ただし、近年では多くの物件で採用されているため、それだけで大きな差別化を図ることは難しくなります。弊社でも以前はクロスを採用していましたが、アクセントクロスを使っても「一般的な賃貸物件」として埋もれてしまうことに課題を感じていました。



そこで採用したのが漆喰壁です。






一般的な傾向として、漆喰はクロスよりも施工費が高くなり、初期費用だけを見るとクロスの方が圧倒的に有利です。



しかし賃貸経営では、工事費だけで判断することはできません。クロスは日焼けや破損、汚損が発生すると、全面張り替えが必要になることがあります。一方で漆喰は”部分補修”で対応できるケースもあるため、長期的運用した場合の維持管理の考え方は大きく異なります。



短期的なコストではクロスが有利ですが、長期的な維持管理と競合物件との差別化まで考えると、漆喰リノベーションも十分検討する価値があります。



実際に弊社でも、初期費用の高さだけでなく、長期的な運用や原状回復のしやすさまでを考慮した上で漆喰を採用しました。その結果については、次章で詳しくご紹介します。


4.8年以上運用して分かったメリット


8年以上運用して分かったメリット


漆喰を採用した当初は、室内の魅力向上や競合物件との差別化が主な目的でしたが、実際に施工してみると、原状回復の考え方や募集時の見せ方など、当初は想定していなかった効果も見えてきました。



ここでは施工してみて分かった、漆喰リノベーションのメリットをご紹介します。


メリット①:原状回復費用を抑えやすい


漆喰を採用して最も大きく変わったのは、退去後の原状回復に対する考え方です。壁紙の場合、施工から6年以上経過すると全面張り替えを行っていましたが、漆喰を採用してからは「必要な箇所だけ補修する」だけとなりました。


漆喰補修ビフォーアフター
漆喰壁の補修事例。壁の一部に損傷があっても部分補修が可能になります。


実際に、約5年間入居されていた方が2024年8月に退去した際、貸主負担となった原状回復費用は15,000円程度でした。もちろんすべてのケースが同様の結果になるとは限りませんが、クロス全面張り替えと比べると、大幅な原状回復費用の削減につながりました。



また原状回復費用が抑えられることは、単なるコスト削減だけではありません。補修工事の期間が短くなれば、その分早く募集を開始できるため、内見機会の増加や早期成約につながります。


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メリット②:自然素材ならではの質感が借主満足度につながりやすい


自然素材ならではの質感が借主満足度につながりやすい


漆喰を採用した当初は、あくまでも空室対策の一環として、競合物件との差別化を図ることが主な目的でしたが、実際に採用してみると、単なるデザイン性だけではない効果も感じるようになりました。



弊社物件では、リノベーション部屋に入居された複数の方へインタビューを行っています。その中で印象的だったのが、「部屋の雰囲気が気に入った」「落ち着いて暮らせる」といった声をいただいたことです。



もちろん、これらの評価が全て漆喰壁によるものとは言えません。実際にはキッチンや洗面台、照明など、室内全体のリノベーションが影響していると考えています。



それでも漆喰壁は、室内の雰囲気づくりを支える要素の一つとして機能しており、一般的な賃貸物件とは異なる空間づくりに役立っていると感じています。


▶実際に入居していただいた方へのインタビュー記事です。リノベーション後の暮らしや住み心地についてご紹介しています。






メリット③:築古物件でも写真の第一印象を高めやすい


室内写真の印象が向上しやすい

弊社物件で漆喰壁を採用したことで、室内全体が明るく見えやすくなり、写真でも空間の雰囲気を伝えやすくなったと感じています。



現在の部屋探しでは、まず希望条件に合致した複数の部屋の写真を比較してから、内見先を決めるケースが一般的です。そのため築年数が経過した物件ほど、室内写真の第一印象は非常に重要になります。



特に20~30代のカップルや新婚世帯は、「どのような暮らしができるか」を重視する傾向があります。漆喰壁は単なる壁材ではなく、写真を通じて暮しのイメージを伝える役割も果たしていると感じています。


5.導入前に知っておきたい注意点


漆喰リノベーションには、競合物件との差別化や原状回復費用の抑制など多くのメリットがあります。

しかし実際に施工してみると、すべての物件に無条件でおススメできるわけではないことも分かりました。



特に賃貸経営では、初期費用だけでなく工期や施工体制、そして投資した費用をどのように回収するかまで考える必要があります。また、漆喰は魅力的な素材ですが、それだけで空室問題が解決するわけではありません。



ここでは弊社が実際に漆喰を採用してきた経験をもとに、導入前に知っておきたい注意点についてご紹介します。



注意①:施工できる職人が限られる


施工できる職人が限られる


漆喰施工には左官技術が必要です。一般的なクロス張り替えとは異なり、職人がコテを使って一面ずつ仕上げていくため、施工できる業者が限られます。



また、施工面積や職人の稼働状況によっては、クロス工事より工期が長くなる場合もあります。そのため弊社では、退去連絡が入った段階から工事内容の検討を始め、左官業者と早めに日程調整を行うようにしています。



賃貸リノベーションで漆喰を採用する場合は、材料費だけではなく施工体制や工期も含めて検討することをおすすめします。


注意②:クロスより初期費用が高い


クロスより初期費用が高い

漆喰最大のデメリットは初期費用の高さです。先程もお伝えした通り、漆喰はクロスと比べて平米単価が倍以上高くなるため、全ての壁を漆喰にすると工事費が大幅に増加する可能性があります。



そのため弊社物件では、LDKなどの居住スペースと玄関エントランスの一部のみに漆喰を塗り、トイレや洗面脱衣所などはクロスを使用することでコストを調整しています。



賃貸経営では、予算と効果のバランスを考えながら採用範囲を決めることが重要です。


注意③:漆喰だけでは空室対策にならない


漆喰だけでは空室対策にならない


これは非常に重要なことですが、漆喰壁は競合物件との差別化や室内の印象向上には役立ちますが、それだけで空室が解決するわけではありません。弊社リノベーション部屋が早期成約を実現した背景には…



  • 漆喰壁

  • カフェスタイルキッチン

  • 造作洗面台

  • 間取り変更

  • デザイン性の高い照明の設置

  • ホームページやSNSを活用した募集戦略



などを組み合わせたからです。内見者は室内全体の雰囲気や設備の充実、家賃とのバランスを総合的に判断しています。


6.賃貸経営の視点で見たリノベーションの効果


賃貸経営の視点で見たリノベーションの効果


漆喰を採用して感じた最大の変化は、「原状回復」ではなく「長期的な視点」で部屋づくりを考えるようになったことです。



以前は退去の度に、必要最小限のクロスの張り替えなどの原状回復を行い、コスト削減に注力していました。しかし現在では、空室対策リノベーションによって高めた室内価値をどのように維持していくか。また価値の目減りをどう抑えるかという視点で考えるようになりました。



単なる原状回復ではなく、長期的な賃貸経営という視点で部屋づくりを考えるようになったことが、漆喰リノベーションによって得られた大きな気づきのひとつです。



実際に運用を続ける中で、工事費の安さだけを重視するのではなく、将来的な維持管理や競合物件との差別化まで含めて判断する重要性を実感しました。



また築年数が経過したアパートでは、単に設備を増加するだけでは競争力を維持できません。内見者が住みたいと感じる空間づくりと、それを伝える募集戦略を組み合わせることが重要です。漆喰リノベーションは、そうした長期的な賃貸経営の考え方へ転換するきっかけとなった取り組みでした。



7.よくある質問


よくある質問


ここでは、賃貸リノベーションで漆喰壁を検討している方から、実際によくいただく質問をまとめました。



原状回復費用やクラック(ひびわれ)のリスク、賃貸市場での希少性など、導入前に気になるポイントについて、まとめてみました。



Q1:漆喰壁は退去時に高額な原状回復費用(貸主負担)がかかりますか?


A:漆喰壁の原状回復で比較的多いのが、経年劣化などで発生するクラック(ひび割れ)の補修です。クラックは経年劣化のため原状回復費用は貸主負担となります。


ただし2018年から漆喰壁を採用している弊社物件では、クラックが発生しても部屋の隅など一部に限られるケースが多く、これまでの補修は全て部分補修で対応しています。


実際の補修費用も施工費込みで1万円程度で収まっており、全面補修が必要になったケースはありません。


もちろん、損傷の程度によって費用は異なりますが、空室のたびにクロスの全面張り替えが必要になるケースと比べると、長期的な原状回復費用を抑えられる可能性があります。


Q2:漆喰壁にひび割れ(クラック)は発生しますか?

A:はい。漆喰は自然素材のため、建物の動きや乾燥収縮などの影響によって、細かなクラックが発生することがあります。


なお、クラックは漆喰特有の現象ではなく、クロス仕上げの壁でも下地の動きなどによって発生する場合もあります。


ただし、クラックが発生するからといって、漆喰壁としての機能が失われるわけではありません。実際に弊社物件でも発生事例はありますが、多くは部屋の隅や開口部周辺で見られる軽微なものでした。


そのため、漆喰壁を採用する際は「クラックが全く発生しない壁材」ではなく、「必要に応じて補修しながら長く使う自然素材」であることを理解しておくことが大切です。


Q3:賃貸アパートで漆喰は珍しいですか?

A:一般的な賃貸アパートではクロスが主流のため、漆喰壁を採用している物件はまだ多くはありません。


特に地方都市のファミリー向けアパートでは採用事例が少なく、内見時に「他の物件とは雰囲気が違う」と感じてもらいやすい特徴があります。


そのため、築年数が経過したアパートの空室対策リノベーションでは、他社物件との差別化要素の一つとして活用できる可能性があります。

                   


8.まとめ


今回は、実際に弊社リノベーション部屋で漆喰を導入し、長期間運用して分かったメリットや注意点、原状回復の影響についてお伝えしました。冒頭でお伝えしたポイントをもう一度確認してみましょう。



  • 弊社物件では2019年から漆喰壁を採用し、2026年5月末時点で10戸に施工した結果、空室対策の差別化に有効だった。


  • クロス張り替え中心だった原状回復が部分補修中心となり、コスト削減につながった。


  • 漆喰の質感や明るさは写真映えしやすく、内見時の第一印象が高くなる。


  • 漆喰単体では空室対策にならず、キッチンや募集戦略との組み合わせが不可欠。


  • 賃貸経営では初期費用ではなく、長期的な維持管理と収益改善で判断することが重要。



築年数が経過したアパートの空室対策を図るなら、漆喰リノベーションは有効な選択肢です。クロスやアクセントクロスだけでは競合物件に埋もれやすく、家賃下落や空室長期化につながる恐れがあります。



弊社物件では2019年から漆喰壁を採用し、2026年5月末時点で全20戸中10戸に施工。約5年入居後の原状回復費用が15,000円程度に収まった事例もあり、部分補修によるコスト削減も確認できました。



漆喰は初期費用や職人手配に注意が必要ですが、長期的な空室対策を考えている方は、導入範囲から一度ご相談ください。



今回ご紹介した内容を実践して頂ければ確実に効果は期待できますが、「こんなのどこから手をつけていいかわからない!」という方もいらっしゃるのではないかと思います。


そんな時は私ども(有)山長の「お手軽無料相談」をご利用ください。


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空室対策コンサルタント 有限会社山長

有限会社山長 長田 穣

取締役 長田 穣(オサダミノル)    空室対策コンサルタント


1993年・98年に祖父が建設した計4棟のアパートを、2006年に突如相続。当時は赤字経営に陥り、修繕費すら捻出できない絶望的な状況からのスタートでした。


暗中模索の中、2018年より独自の「高付加価値リノベーション」を本格開始。


その結果、2020年以降はリノベーション前の入居率77%から、年間平均95%以上へと劇的に改善しました。築30年以上の物件ながら、周辺相場より10%以上高い家賃設定で「年間収入430万円アップ」と「満室継続」を同時に達成しています。


この逆転劇は『全国賃貸住宅新聞』などの業界メディアでも大きく取り上げられました。


現在は、山梨県内を中心に空室対策コンサルタントとして活動。自ら苦境を乗り越えた「大家の痛みがわかる専門家」として、コストを抑えつつ物件収益を最大化する、持続可能な満室経営をサポートしています。


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▶︎〒400-0053 山梨県甲府市大里町2090

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