日銀は今年3月19日の金融政策決定会合で17年ぶりに利上げを決定。その影響を受けてメガバンクは普通預金金利を20倍に引き上げ他行も追随し金利を引き上げています。
政策金利が引き上がると短期プライムレートの金利が上昇し、連動する変動金利も上がります。
アパートローンは変動金利型のため、日銀が利上げを行うと必然的に変動金利型のアパートローン金利も高くなります。
アパート経営は多額の融資を得て経営を行っているため、金利が上昇すれば毎月の返済額が増えるため一部の貸主は「金利が上昇する前に借り換えを行った方がいいのでは?」と考えると思います。
本投稿は金利上昇を機にアパートローンを借り換えすべきかについてお伝えいたします。
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▼目 次
【本記事でお伝えする結論】
1.賃貸経営と利上げ
一般的に金利が上昇する時は「消費者物価指数」「実質賃金」が上昇していることになります。消費者物価指数が上昇するとタイムラグ(1~2年ほどかかりますが…)があるものの家賃も上昇すると言われています。
そのため金利が高くなると、賃貸経営的には利息払いが高くなるものの家賃収入が増加する可能性があるため賃貸経営が悪くなることは少ないと言われています。
ただ現実的には大手企業は軒並み賃上げが実施したものの、中小企業の多くは賃上げされていないのが現実。その結果このままの状態が続けば…
家賃支払えない方が増加→滞納率上昇→再募集しても客付けが難しくなる
特に低家賃で貸している貸主の賃貸経営に影響が出る
ため注意が必要です。また利上げを機に家賃値上げを検討している貸主は多いですが、仮に正当理由があったと借主に拒否されれば家賃値上げはできません。
2.変動金利の見直しはいつ?
変動金利の見直しは金融機関によって異なります。住宅ローンの場合は4月と10月の年2回行われ「元利均等返済」を選択されている方は、5年ルールと125%ルールが適用されます。
5年ルールとは?
半年ごとに適用金利の見直しがされたとしても、5年間は毎年の返済額は変わりません。ただ5年間に適用金利が上昇すれば利息も増え、急激に適用金利が上昇すれば毎月の返済額より利息部分が大きくなりキャッシュフローにも影響が出てしまいます。
125%ルールとは?
5年後に毎月返済額見直しを行う際、適用金利が上昇したとしても、それまでの毎月返済額の125%を超えることはありません。
ただ変動金利型のアパートローンは5年ルール/125%ルールは採用していないため、日銀が追加の利上げを行うと変動金利はさらに上昇するため損益分岐点は従前より高くなってしまいます。
弊社物件がある山梨県の一部金融機関は日銀の利上げ発表を受け、今年8月に短期プライムレートを0.15%値上げする発表し、10月から新金利での取引が開始されます。
弊社が借りているアパートローンを含む大型融資も今年10月から金利が0.15%値上げされます。因みに弊社アパートローンの場合、0.15%UPで従前より毎月3,500円程度高くなり、年間約42,000円支払額が増えます。
3.【金利上昇】アパートローン借り換え検討すべきか?
1)借り換えするメリットは?
アパートローンは融資額が大きすぎるため、たった0.1%金利が上がると毎月の返済額が大きく変わってしまいます。金利の変動がさらに加速すれば確実にキャッシュフローが悪化する物件は増えてきます。
そのため変動金利が安い金融機関に借り換えすることにより…
支払総額を抑えられる
キャッシュフローが改善され内部留保が溜まりやすくなる
メリットが大きくなります。アパートローンの返済期間が10年以上/5,000万円以上の残債がある貸主は、借り換えすることでメリットが大きくなります。
2)借り換えを検討すべきか?
多くの金融機関では日銀の利上げ発表を受け短期プライムレートを高くしました。ただ今すぐ借り換えを行うのは時期尚早で、日銀が追加の利上げを発表する気配があった時でも借換は遅くはないと思われます。
もし万が一にも今回の利上げによりキャッシュフローが厳しくなりそうな場合は、無理せずにリスケジュールを検討してもらえないか、金融機関に相談されることをおススメします。
3)借り換えする際の注意点とは?
費用が発生する
借り換えされると金融機関は利息収入がなくなるため、金融機関によっては「違約金」が設定されている可能性があります。契約内容によっては数百万円になる可能性もあります。
また借り換えする際以下の費用が発生します。
事務手数料(5万円程度)
印紙税(ローン金額に応じて数千円~数万円)
登録免許税(借入先の金融機関の借入額×0.4%)
司法書士手数料(登記、抵当権の設定/抹消手続き5~10万円程度)
傘を取り上げられる
都市銀行のアパートローン金利は金融機関の中で安い部類に入っています。そのため都市銀行に借り換えを検討される貸主は多いと思います。
金融機関には「晴れた日に傘を貸して、雨の日に取り上げる」という言葉あります。つまり業績がいい時は積極的に融資してくれるものの、業績が悪くなれば追加融資拒否/場合によっては債権回収することもあります。
都市銀行/地方銀行は「株式会社」なので利益追求/会社や株主のために事業展開しています。そのためアパート経営の業績が悪くなると「傘を取り上げられる」可能性が高くなるためその点は注意しなければなりません。
▶金融機関の詳細は過去記事をご覧下さい。
4.リノベーション融資はどうしたらいい?
近年の賃貸業界は部屋探しの多様化が進んでいるため、リノベーションを行うことで収益アップ/早期客付けが期待できます。
ただ今後金利が上昇することが懸念されるため、リノベーション資金を金融機関で借入するとなると今までと比べ負担額が大きくなってしまいます。
そこでぜひ活用してもらいたいのが、公的融資制度です。
お住まいの市区町村役場には公的融資制度がありますが、同融資制度は…
固定金利なため金利上昇はない
事業系融資と比べ金利が安い
保証協会にに支払う保証料が一部公費負担
利子補給が受けられるものもある
税金滞納がなければ融資が受けられる
ためリノベーション資金としてはとても使いやすいと言えます。
5.まとめ
今回は金利上昇を機にアパートローンを借り換えすべきかについてお伝えしました。冒頭でお伝えしたポイントをもう一度確認しましょう。
変動タイプのアパートローンを借りている貸主にとって、今後金利が上昇すると今までと比べ返済額が大きくなってしまうため、キャッシュフローが悪化してしまうリスクが出てきます。
リスクを抑えるには支出を抑えることが重要ですが、それと同時に物件収益力を高め内部留保がためやすい体制にすることが求められます。
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取締役 長田 穣(オサダミノル)
アパート経営、空室対策コンサルタント
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